15. アートの未来   先日もゴッホの話題で久しぶりに活況を見せた美術業界も中東の戦争の話題 でかき消されどこに行ってしまったのか、春の通り風のような話題になった。 しかしながらゴッホであったとは別の次元で中川コレクションの先見性には感 心する。画伯が知ってか知らずか、氏の絵に対する感性には今の作家至上主義 的な美術市場(どこの国も同じかも知れないが)に比べ本来の美術作品が持つ力 に眼を向けなければ本当の美術は見えてこないことを感じた。 でもこれもゴッホであったが故のことかも知れない。暗い美術業界に照らされ た一筋の光ともいえる話題ではあったが、その作品がオリジナルとはかけ離れ た修正を施されている点でこれほどの高値に及んだことに疑問を投げかける人 も少なくはない。私はむしろ鑑定されず数万円の価値しかなく落札された方が ある種の楽しみもあったような気もする。中川画伯はこのことをどう思ってい しゃるのか。そのことに興味は尽きない。 さて今アートはどう進んでいくのだろうか。日本の美術は西洋と比べると多岐 にわたる過去に述べたようにこれほどまでにジャンルの多い国も珍しいのでは ないか。このジャンルの多さに日本の美術市場に制限を与えているように思え てならない。西洋のテンペラ画から油絵具また現代美術、イラストレーション の世界でも用いられるアクリル絵具などの洋画は版画を含め外国から輸入物で ある。しかしこの絵を描くという材料、つまり画材に目を向けて見ると日本の ジャンルは崩れてしまう。 もともと絵を描く材料は大きく分ければ色からなる顔料とその顔料を溶くない しは画面に定着させるものに分けられる。そもそも顔料も定着剤も絵を描くと いう点ではそれほどの差異はない。テンペラ画から油絵に移行した歴史は絵画 技法の技術革新に過ぎないから、卵の黄身を定着剤に用いたテンペラも膠を定 着剤に使う日本画も同じ分類になるのだ。また油絵具も定着性と絵画表現の手 段から生まれた絵具だから、現在の油絵具よりも速乾性に富むアクリル絵具も 同じ領域になる。 そう考えると、絵画に関しては一領域に区切られ、版画、工芸の3つに大別さ れる。書も膠で固めた墨から材料で芸術表現の手段であるから絵画に含まれる このように材料という単純なもので考えるとそれぞれにアートの差別など存在 しないのではないか。そして単純に芸術表現の手段に技法があると考えればす べての表現はアートになる。一般に難解と思われがちな現代美術も理解できる のではないか。実はアートの差別化は実は本来差別などないはずの材料に起因 していたことがわかる。実はアートの未来はこんな単純なことを理解するかし ないかで未来を開く鍵が隠されているように思う。(完)