13. 洋画の未来   今名古屋では日展が開催されている。こちらでは新年初頭の大展覧会として 定着している。新聞紙面では、いつもの通り地方版で地元の初入選作家が紹介 されている。いまだ日展に入選することは作家にとってステータスになってい るようだ。 私といえばここ何年この日展には足を運んでいない。運んでいないと言うより も行く気がしないのだ。資料として図録は購入しても実物を見ることはない。 美術愛好者にお叱りを受けるかもしれないが、当店のお客様の中にも日展は行 かないという方が多くおられる。理由は至極簡単なことで観るに値する作品が 少ないことと日本画、洋画、彫刻、工芸の5部門が展示されるにぎわしさにも 一因している。日展ガールなるおよそ美術には縁遠い女性のコンパニオンの衣 装や黒山の人だかりにへきへきするのも私だけではないだろう。しかも来場者 も教えをこう先生の作品を拝見することが目的のアマチュア画家の風情を多く 見かける。およそ美の世界に浸る時間など皆無にひとしい。 一般的にこの日展という権威の恩恵を受けて間接的、直接的に商売に結びつく ことは多い。前にも述べたが日本人は一般的に画歴にこだわる人が多い。 例えば油絵の数万円程度のパンガ(一般画)にも日展経験にこだわる人が多い。 商売上うそも方便で、そう言われればそうですと答えざる終えない。なぜなら どんな優れた作品でも日展(有名団体)入選経験がなければダメと言う価値判断 下されてしますからだ。日本において画歴とは時に作品を上回る価値を持つと 言ってもいい。 洋画の中でもとりわけ油絵信仰の信者は多い。水彩画、パステル画、アクリル 画などは少数派で、人気において油絵は郡を抜いている。最近では混合技法の 作家も出てきているが、認識としては油絵と見られている。しかし画歴を重視 するのであれば、同じ絵を大量に描き版画のエディション数などはとっくの昔 に超えてしまっている作品を選ぶか、オリジナルにこだわる作家の水彩画やパ ステル作品を購入したほうが明らかに美術の資産価値は高いと言える。 またこの大量生産で生まれる作品には名前貸し的作品や架空作家の作品も多く 存在する。特定はしないが、その作品に人気があれば需要と供給の関係で一人 の作家が描くには限界がある。顧客にも予約待ちには限界があるからクレーム やキャンセルは避けたい。そこでオリジナルとして1点見本で作家に依頼しあと は台湾や中国などで共同制作して大量に商品を作るケースやもっと安価なもの は大量に描かれた同じ作品の油絵を架空の作家のサインによって完成させるケ ースもある。事実パリの通りで売られた油絵が台湾製だったなんてこともあっ た。しかしながら私はこれは詐欺商法とは思わない。こういった作品の大半は 美術とは無縁の付加価値によって生まれた作品だからだ。顧客もだまされたと 言う認識は無いに違いない。同じ作品を描くことには価格と数において限界が あることは冷静に考えれば解ることだ。だからこの業界にトラブルはないし顧 客のニーズに答えている点では優良な業者だろう。 美術愛好家を自認するならばまずこれらの分野は美術品にあらずと考えるべき でことさらに画歴とか出身大学にこだわらず、純粋に作品に対時することで評 価すべきだろう。その上で画歴はあとからついてくるものでそれが作品の付加 価値につながっていくのではないか。どんな作家でも駄作と傑作は存在する。 見るべきものはその作品でしかないことを知れば良質な作品も、優秀な作家も 生まれてくるのではないか。