11. 一般市場につけいる絵画  11月から12月は美術業界も年末商戦たけなわだ。特に掛軸の展示会はスーパ ーやデパートでどこでも行われている。当方も少なからず取引があり、この年 末は多忙になる。また価格において適正を知るために他社の展示会に足を運び 調査している。 先日あるデパートの掛軸の展示会に足を運んだときのこと。なんと当社とお付 き合いがある取引先の元担当者が売り場にたっていた。前に親しかったことも あり、前からこの展示会の価格が当社の価格の2倍から3倍の価格をつけている ことに疑問を感じていたので率直なところを聞いてみた。元担当者いわく、こ の価格は評価額をつけていてここから半分引いて売るのだそうだ。なるほど私 には出来ないが巧い売り方だと変に感心した。そして顧客はどう感じて購入し ているのかと思った。おそらく半分も引いてくれてお値打ちに購入できたと思 っておられるのだろう。そのお値打ちな価格が実は一般的な市場価格なのだ。 当社はそんな売り方はしたこともないし、したくもない。人をだまして売って も美術に対するイメージを悪くするだけで美術市場の拡大につながらない。こ の商法こそが美術品を価格があってないものと思われている一般認識の温床と なっている。美術家名鑑片手にことさらに価格をあおる売り方をする業者には 気をつけていただきたい。また業者もこう言った手口には批判的であるのが、 一般市場で問題なく売れている現実の手をこまねいている。現在の不況下では 業者は売れれば何も言えない。 一般的に絵画の市場価格は発表価格と言われる価格が基準となる場合が多い。 インテリア的な絵画は別にして作家ものの絵画はこの発表価格が評価額に比例 する。今現在出版されている年鑑、名鑑、名典などの美術作家名鑑の評価額はほ とんどが傑作の評価を掲載している。私の知る限り、デパート、画廊、美術業者 の市場価格を基準に掲載しているのは美術市場の一誌のみだ。但し現存作家の みにとどめ作品により評価が異なる物故作家に市場価格を掲載していない。ジ ャンルも日本画、洋画、掛軸にとどめている。また掲載作家の数も少ない。 バブル期に他業種の新規参入で絵画の価格が以上につりあがり作家の評価基準 が不明瞭になった。バブル崩壊で他業種の撤退が始まり、評価額が不明瞭な作 家は業者とともに消えて美術業界は事なきを得たが、一般市場の美術品に対す る無知につけこみ、自身の業種の努力もせず、先に述べた手口で美術市場を荒 らす他業種も参入してきている。しかも、業者から見れば最終的に顧客が購入 する価格が適正な価格になるのでクーリングオフを過ぎれば手の打ちようがな いのが現状だ。 日本画、洋画市場が厳しい状況の中、住宅事情の変化でなくなると言われた掛 軸の需要は比較的安定している。日本文化の特色である床の間の飾り物とし 根強い人気を誇る商品だ。しかしながら先に述べた商法がまかり通るようでは 先行きも不安だ。道具としてもインテリアとしても優れた掛軸を残すためにも 適正な価格を顧客に提供する必要がある。