10. 一般市場として絵画  さて美術はとかく特別の人たちのものという認識がある。確かに画商や百貨 店の扱う絵画は高額な作品が多い。お金持ちのステータスとして絵画は確かに 存在するのも事実だ。 かつてバブル期の頃、百貨店で売られた油絵が5万円の値札がついていた時は 一向に売れない油絵が値段を10万円に付け替えた途端に売れた。などと言う 話を聞いた。なるほど百貨店のステータスと顧客のステータスが一致した結果 と変に納得してしまった。 かつて日本の美術商は銀座に店を出すことにステータスを持った。私も若い頃 はそんな夢を抱いたことがある。また一流の画家と付き合うことがステータス でもあった。事実かつては作家が画商を選ぶ時代があったし、今でも売れる作 家は画商を選ぶ。 現在画家の間にかつての徒弟制度はなくなったが現代の徒弟制度なるものが存 在するようになった。一般にもある学閥制度だ。芸大の教官を中心にした百貨 店での展覧会はこの学閥制度の最たるものだ。特に日本画に多い。教官と生徒の 間にある種の徒弟制度に縛られて画家として独り立ちを妨げている場合も多い。 作品も30号から50号と公募展並みの大きさなので、今の絵画不況下では作品が 売れることはまづない。ま〜教官にたてつく勇気もないのも事実だ。 そんな若手の作家の作品でも作品が大きい分高額になり一般的には購入できる ような金額ではないし、一般的な家庭では飾る大きさではない。買う絵ではな いのだ。ここに美術市場の線引きが生まれた。 購買者の心理を考えてみよう。日展に代表される大きな展覧会は連日満員の賑 わいだ。美術展のミュージアムショップで絵ハガキやポスターを買う人も多い。 でも一般に展覧会を観る人は展示された作品をほしいと思っても手に入れる絵 画とは考えていないのではないか。でも絵画はほしい。一般的に購入する絵画 は自分がほしいと思う絵画のイメージに近い作品を一般的に購入している。 例えば版画が台頭する前に一般市場に浸透していた絵画は風景や花をモチーフ にした油絵だ。しかもほとんどが北アルプスなどの信州の風景やバラが多い。 日本人の心をくすぶるうまい手だと思う。日本人は印象派の絵画が好きだとよ くいわれるが、写実性の強い油絵が一般的にもてはやされてきた。一般的な美 術市場は銀座の画廊が作り出したものではない。むしろ画商はそんな人々を差 別してきたと言っても過言ではない。また住む世界が違うと蔑んできたのだ。 では絵を購入する人だけが作家を育ててきたのか。むしろ買えない人々が作家 を育ててきたのではないか。私も含め、今作家も画商もそこに気づくべきでは ないか。 一般市場に氾濫する絵画の大半は鑑賞画以上の価値は存在しないだろう。しか し市場はそれらを購入して楽しんでいるのも事実だ。また美術以外の付加価値 を求める絵画もある。風水絵画などはその典型だが、古来日本画の世界でも吉 兆画の芸術作品は数多く存在している。歴史を考証するうえでも重要な意味を 持つ。そしてこれらの絵画が愛されているのも事実なのだ。 これから絵画市場はますます多様化するだろう。通り一辺倒のものでは通用し なくなる。一般市場としての絵画と本来画廊が扱う絵画の境界線もなくなるに 違いない。そして作家の枠組みも消えるだろう。もう肩書きだけで通用しなく なるだろう。私もその点に重きを置いて市場の意見に耳を傾けようと思ってい る。若手の作家ももっと野に自分自身を解き放してもらいたいものだ。