4. 作家名鑑の功罪 先回のテーマの肉筆画信仰による盲信は版画(複製版画)に比べて 手描き(肉筆)の一般的に優位であることを利用した商法を紹介した。 今回は一般的によく利用される商法で顧客が誤解を受けやすいもの 作家名鑑について話したい。 ご存知の通り美術○○とか美術家○○と言う分厚い大そうな本である。 これらの本は有名美術協会所属作家はもとより地元の小さな団体の 作家まで網羅している。 中にはそんな無節操な状況に掲載を拒否した作家もいた。 しかしながら有名、無名にかかわらずありとあらゆる作家が乱立する。 掲載の基準はおそらくないだろう。あるとすれば掲載料を払えば 誰でもOKだろう。 日本画団体など有名な団体はほんの一握り。その他は業者お抱え作家に よって構成された団体や(らしい漢字のついた会)仲良しグループだ。 そして彼らにしてみれば現在の美術不況の中で食っていくための手段 なのだ。事実、今絵だけで飯を食える作家など数少ない。 だから先回述べた平気で外国に名前だけを売る作家が存在するのも 無理はない。純粋な食えない作家は転職の道しかないのだ。 作家名鑑の評価は一部を除き傑作を基準に評価額をつけている。 注意すべきは絵で言うと1号(はがき1枚分)評価と10号評価のものが あったり基準の大きさに違いがあることだ。 この評価は日本独自のもので海外ではない。 海外ではほとんど作品で評価する。 現存作家の場合、故人になればほとんどの作家が物故作家欄には 掲載されない。生きているうちが華なのだ。 よく故人になれば評価が上がると思われているが、それは逆で 物故作家欄に乗る作家はその時代に評価された限られた作家である。 しかし稀に後に評価され掲載される場合はあるがそういった作家は 作家名鑑に乗る乗らないで左右されるような作家ではない。 よく騙されるケース(本人は騙されていないと思っているが今回は はっきりと断言する)はこの号評価をうまく利用して高く売る場合。 手口はこうだ。 (スーパーなどの展示会場で)  売主:お客さんここ見てよこの絵は美術○○で号6万だよね。     10号だから60万だけど内は特別の6万だよ。     ○○会所属で将来有望だよ。 ここには買い手の心理をついた法則が存在する。  @会などの組織に所属した作家に弱い。  A大幅な値引きや値段の格差にお値打ちと錯覚させる。 実際この絵は無名の業者の作った架空の団体で実際の価格は6万を 割っている。こんなケースは数え切れないほどある。 実際来店されたお客様との会話でこんな手口で高く購入したケースを たくさん経験している。 たとえば作品の良し悪しは別として日展は美術界の登竜門として評価が 高い団体であるが作家名鑑にはその年の日展初入選作家は掲載するが 作家としては一度きりそして入選もできない作家でも所属団体や市場の 売買によって掲載可能だし事実掲載されている。 すべての評価を正当にできる作家名鑑などないといえる。 作家名鑑は数え切れないほど存在する作家を知る上にはとても便利なもので あるし、美術界の動向を知る上では貴重な資料である。 しかしながら作家名鑑を利用した商法は今後も続くだろう。 くれぐれも作家名鑑片手に絵を売る業者にはご注意を。