3. 肉筆画信仰 今回からいよいよ具体的な問題に入っていきたい。 今回のテーマは肉筆画信仰による盲信 よくお客様さまから口にする言葉にこの商品は肉筆ですか。と言う 問いかけを受ける。 特に版画に対してよく聞かれる言葉だ。 業界人見ると画面にある何分のいくつとサインがあれば版画と 見れる基本的なことも一般的には作品に目が向いているから自筆の水彩画 のように見えるのだろう。お客さまにとってはごく自然なことだろう。 逆に言えば今の版画技術の向上によってそう見えるのかもしれない。 そのことが問題ではなく一般的に肉筆画イコール価値が高いと思われて いることが問題なのだ。  業者によってはこの消費者の肉筆信仰を逆手に取って販売するケースも 少なくない。むしろ通販業界に多く用いられる手法とも言うべきものだ。 本題に入る前に断っておくが決してその手法が悪ではない。  たとえば業界用語にパンガと言う言葉がある。この言葉は一般画の略で 1点物の作品と区別して用いる。また作家の業界の評価にも重要な言葉だ。 某番組で鑑定人が時折口にする言葉に鑑賞画で評価されない。と言うこと がある。これはきれいに言っただけでこれはパンガだから価値はないよと 言っているのと同じだ。  ではパンガとは何か。簡単に言えば量産した肉筆画のことである。 高い安いの問題ではなく同じ絵を何枚も描いている作品を指す。 物によっては一部を印刷して細部のみ作家が手を加える物。 もっと言えば作家が一枚見本を描き、人件費の安い海外で何人かの手により 制作。作家は売上に応じてマージンを得ることで了解する物。 さらに言えば架空の作家を作り大量で生産する物などと世の中にはその手の 作品は横行している。 しかしよく考えればわかることだ。作家一人が制作する時間と点数などその 商品が人気があればあるほど無理なことだ。 なぜ美術品ばかりが肉筆イコール美術価値と見るのか。 たとえばブランド商品。量産し販路拡大を図れば海外の安い労働賃金で大量 に生産する必要が生じる。 逆に一部の高級ブランドは販売顧客を限定し逆に地元の限られた職人だけで 小ロットで生産し高い価格で売る。 両者とも自社ブランドを広めるための戦略だ。  美術販売業界は一部の老舗画廊を除き商品のブランド性で売るしかない。 したがって肉筆画というのも商品のブランド性を高めるひとつの要素なのだ。  当社でもそうした商品も人気があれば当然売る。パンガとしての説明や 肉筆画の解釈はお話するようにしている。 それでお客様が購入を控えることはない。理由は単純だ。 そのものが気に入ったから。  しかしあなたがそうした商品に美術的価値を認めないなら購入はしない 方が良い。  でも自分の予算にあった美術品を購入したいなら量産された肉筆画を選ぶ よりも版画をおすすめする。 作家の個展などに足を運び一点ものを選ぶ手もある。 果たしてあなたは絵画にブランド性を求める方ですか。 それとも作品そのものに価値を発見する方ですか。 しかし両者とも美術愛好家であることには違いはありません。